TOPテキスト系


『おひるね』










「ちぃちゃん遊ぼ!」
 ある日曜日の昼下がり、美羽がいつものように窓から侵入してくると、
いつもはいるはずの千佳の姿がそこにはなかった。
「ちぃいちゃん?いないのー?」
 美羽はキョロキョロと部屋の中を見回し、机の上にせんべいが置かれているのを発見した。
「ちぃいちゃんいないのか……つまんないの」
 美羽は当然のようにせんべいを手に取ると、バリバリと食べる。
「お姉ちゃんの部屋にでも行ってみるかな」
 美羽はそのまま部屋を出ると、伸恵の部屋に行った。
「お姉ちゃんいるー?」
 そしてノックもせずにドアを開ける。
 するとそこには、ベッドの中ですやすや寝息を立てている伸恵の姿があった。
「お姉ちゃん……?」
 美羽は伸恵のほっぺたとツンツンと触るが、一向に起きる気配がない。
「ダメだなぁお姉ちゃん。こんな昼間から寝ちゃって」
 美羽はため息をつく。
「……ホント、お姉ちゃんってばしょうがないなぁ」
 そして、そのままごそごそと伸恵のベッドにもぐりこんだ。

 それからしばらく時間が経ち、アナが遊びにやってきた。
「アナちゃんいらっしゃい」
 千佳が家の中へと招き入れ、二人で二階へとあがっていく。
「お姉ちゃん、アナちゃんが遊びに来たよー」
 ノックをしてドアを開ける。
「!!」
 そして飛び込んできた光景に、アナは言葉を失った。
 そこには、ベッドでスヤスヤと寝息を立てる伸恵と、寄り添うように寝ている美羽の姿があった。
「み、美羽さん!!何をやってらっしゃるのですか!?」
 信じられない光景を目の当たりにし、アナは思わず声を上げる。
「フッフッフッ。お姉ちゃんの横はあたしの指定席なのさ。アナちゃんは床にでも寝ていたまえ」
 そんなアナに火に油を注ぐかのごとく、美羽は言葉を返す。
「な、なんですってええええええ!?」
 案の定、アナは激昂し、美羽を伸恵から引き剥がしにかかる。
「離れなさい!!お姉さまの隣は、わたくしこそがふさわしいのですわ!!」
「お姉ちゃんに隣にふさわしいのはあたしだもん!」
 しかし美羽は布団のシーツを掴んで、離れようとはしない。
「みっちゃん……」
 千佳はため息をつく。
「わたくしです!」
「あたし!」
 そんなアナと美羽の激しいバトルの横で、伸恵は幸せそうな寝顔を浮かべたまま、
起きる様子もなくスヤスヤと寝息を立て続けた。

(終わり)



written by 杠葉湖さん





back