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夏の終わり
夏の風が吹いた。
もう日は赤く染まっていた。縁側で足を投げ出していた俺は夏の終わりを予感した。
蝉の声もいつになく弱々しく、もうイライラさせるほどの鳴声を出せなくなっていた。そんな耳障りだった虫たちの声も急におとなしくなるとなぜだか淋しくなるものだ。
目をつぶった。
この夏にあった出来事をゆっくりと思い出す。
夏、あの子と出会った。
夏、あの子と遊んだ。
夏、あの子と別れた。
夏の思い出たち。
何かを求めていた自分は、大切な何かと引き換えに大切なものを見失ったんじゃないか、見失っちゃいけないものを手放したんじゃないか。
長い夏は終わりを告げようとしていた。
その手に残ったのは、後悔。
まだ足りなかった。時間が、出会いが。
長い夏は、長い時間だけにその時間の大切さを見失ってしまう。
目を開ける。
涙がこぼれていた。
夏は終わったんだ。
「……また会おう……」
ゆっくりと縁側から涙をぬぐいながら立ち上がった。
気のせいか蝉の声は少しうるさくなったようだ。
夏は終わらない。いつまでも、いつまでも続いてゆく。
終わりのない飛行機雲が描かれた青い空ように。
心に描いた青空はいつでもよみがえる。
あの夏の匂いとともに……。
夏は終わった。
written by Snow Nameさん
※小説部分は頂戴いたしましたHTMLのまま掲載させていただいております。 |